わたしが息子と甲子園球場で初めて見た歴史的な試合。親としての感想まで書き始めるときりがなくなるが、普段と同じようにグランドでの出来事を可能な限り淡々と観察したので、この試合についてもいつもと同じ調子で書き残しておこうと思う。

前日に降った雨はあがり、空は徐々に晴れてきそうだ。朝の5時に起きて新幹線のこだまと地下鉄、阪神電車を乗り継いで甲子園球場を目指した。阪神電車の甲子園駅に着いてみると、駅の前に新しいタイガースショップができていたり、球場の前に大きなゲートができていて驚いた。これまでの人生でこれほどまでに長い期間、甲子園球場から足が遠のいたこともなかったので、3年も来ないと変わっている箇所が目に付く。ひとまず第一試合のフィールディング練習が始まる前には到着することができて胸をなでおろす。

スタンドに入ってみると、日差しは照りつけているものの気温はそれほど高くないため、まだグランドは湿っているように見受けられる。そして内野の所どころには白い砂が入れられているので、地面は少し重そうだ。やがて後攻チームからノックが始まる。地方大会だとスコアボードのボールカウント表示が残り分数を示しているので、時間の経過が分かるのだが、甲子園球場の全国大会だけは、それがない。それゆえ甲子園球場での唯一の手がかりは、自分で時間を計測していなければ、“ノック、あと1分”というアナウンスだけ。

しかしこの試合では、先攻の大垣日のフィールディング練習中に、その“あと1分”のアナウンスがないままフィールディング練習が終了。フライノックを続けていた大垣日は、サイレンの音とともに、あわてて遊撃手にだけ本塁返球(内野4つ)のノックを1本打っただけでベンチに引き上げていった。試合前にわたしは大垣日#1がある程度の投球をすれば、この試合は大方の予想に反してもつれると考えていたのだが、その一連の光景を見てはっきりと嫌な予感がした。

やがて試合が始まる。1回表の大垣日の攻撃が始まるとすぐに、横に座っている息子がいきなり“星稜の外野手は守備位置が左に寄っとる”などと発言する。いきなり何を言い出すのかと思ったが、まさしくその通りなので否定する余地がない。そして1回裏、星稜は先頭打者の安打を足がかりにして一死満塁から5番の左犠飛で1点を先制する。星稜1番の安打の打球が鋭かったのは仕方ないとして、3番の三塁手への打球を二塁走者に触球できず安打としてしまったのが痛かった。

2回表の大垣日は先頭打者が出塁し、次打者が強攻して凡退で一死となる。6番一死一塁でボールカウント2ボール0ストライクのとき、投球前に星稜の中堅手があからさまに右に7~8メートル移動するのが目に留まった。そのあとの3球目がエンドランで、打って三ゴロ一塁封殺で二死二塁となる。その一連のプレーを見ていて、大垣日の出しているサインが、星稜ベンチ(orバッテリー)に見破られているのかな?と一瞬思った。まぁ、バッテリーがサインに気づけば投球をウエストするだろうから、なにかを察したとすればベンチにいる選手なのかもしれない。いずれにしても、一連のプレーが少し不自然な流れに感じた。単に打者の所作を見て打球方向を察知した外野手の動きと、ベンチがエンドランのサインを出すタイミングが一緒になっただけなのかもしれないが。
(※こんなことを瞬時に思ってしまうのは、別に監督さんを悪く言うつもりはないけれど、内容は違うが、過去に星稜の試合でサイン盗み騒動があったからにほかならない)

ここまでは試合の流れのたぐり寄せあいだったが、星稜が3回裏に二死二塁から4番の左越本塁打で2点を追加したあたりから徐々に地力を発揮し始める。大垣日は4回から投手交代して#10がマウンドに上がるが、星稜は4回裏にも8番と1番の適時打で2点を追加して試合の主導権を握る。早い段階で反撃したい大垣日は5回表、二死一二塁から3番の左前適時打で1点を返すが、その時のプレーで一塁走者が三塁憤死して攻撃が途切れてしまった。その後も追加点を挙げた星稜が、終盤の大垣日の反撃をしのいで6-2でゲームセットになった。

星稜は1番が安打や敵失で出塁して得点につながったのが試合の主導権をつかむうえで非常に大きかった。大垣日は失策、守備の細かいミスや、打ち取ったはずの緩い打球がすべて失点に直結してしまい、試合の流れをつかめなかった。攻撃では走者をそれなりに塁上に進めたが、後手に回ったこともあって打線が思っていたようにつながらなかった。そして8回表の攻撃で右打席に立った大垣日#1が両打ち(スイッチヒッター)だったとは知らなかった。

わたしは生まれて初めて甲子園球場に連れてきてもらった時のことを今でもよく覚えているが、星稜の黄色いアルプススタンドとそこから流れてくる陸の帝王や関ジャニ∞、ディープパープルなどの洋楽の演奏が、息子の脳裏にはどのように刻まれていくのだろうか。そしてピンク色に染まった大垣日大のアルプススタンドから聞こえてくる今江敏晃のヒッティングマーチが、彼の心にどんな風に響いているのかと考えると、親としてはとても100%の力で試合を観察できる心境ではなかった(笑)。将来、このブログの更新を彼が引き継いでくれるといいんだけどね。