高校野球観戦日記

高校野球を見たときことをつづります。 このブログはおもに毎年春と夏に更新しています。テレビに映らないプレーを見るのが宗旨です。

2016/04

余談・“上に立つより役に立て”ですか・・・

大会が終わって一週間が経過するが、総括とは別に書き綴っておきたいことがある。今大会では、某国営放送で長きに渡って解説をされていた方が、監督として甲子園球場に戻ってきた。私はテレビをまったく見れていないので知らないのだが、以前と変わらず穏やかな優しい口調で、試合後のインタビューに応じていたと聞く。現場に入り浸っているとテレビを見ることもままならないので、その語り口を聞けなかったことが惜しまれてならない。

その監督さんが発した言葉で、私の印象に残ったのが「上に立つより役に立て」という言葉。このような強い信念を持った大人に指導されて野球に(仕事でも)取り組むことができたなら、その後の人生を生きていく上での指標が、必ず見つかりそうな気がする。よい導きがあれば、どんな子どもでも輝きを放つ人生を送ることができるはず。最近わが国では若者による物騒な事件が多いが、まわりの大人がうまく手を差し伸べていれば、こんなことにはなっていなかったのではないかと思えてならない。

「甲子園で勝ちたい人は熊本を出る、甲子園に出たい人は熊本に残る」というのは私の住む岡山県にも当てはまる。広島東洋カープにいる福井優也や野村祐輔は岡山県出身だが、その後の経歴はご存じの通り(注:西粟倉村出身の福井は愛媛県の済美に、倉敷市出身の野村は広陵に進学した)。野球留学については賛否両論あろうが、私個人は大学に進学するときに遠方に行ったため、気候や文化の違う地域で生活することがどれほど大変なものか分かる。故郷を離れることによって得られる物もあるはずなので、そこにいい導きやいい出会いがあるのであれば、それほど批判的になる必要もないのかなと思う。

そして、高校野球解説者として「2、3000試合は見た」とか。私は20年ほどかけて今やっと600か700試合ほど。最低でもこの3倍は見ないとここまで達観して高校野球を見ることができないのかと思うと気が遠くなる。しかしどんな高い山に登るとしても、まず一歩踏み出すところからすべてが始まる。今年もすでに夏に向けて熱い戦いは始まっているし、これからも選手諸兄のひたむきさをテレビには映らない角度からつぶさに観察していきたいと思う。

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第88回選抜が終わって

連日寒いなかで行われていた選抜大会が、智弁学園の優勝で幕を閉じた。今年の大会は試合中にそれほど雨は降らなかったが、とにかく寒い大会だったという印象である。これだけ寒い日が続くと、3月中に大会を終える開催期間については再考が必要にも思えてくる。ほんの10年ほど前は3月25日くらいが選抜大会の開幕日で、桜の咲く4月になってからも試合がおこなわれていたと記憶している。プロ野球の試合数が増えた関係で開幕が早まった影響なのだろうが、果たしてこれでいいのかと思わざるを得ないくらい寒い大会だった。寒い春の大会にせよ、暑い夏の大会にせよ、年を追うことに現場で観戦する者にとっては過酷さが増しているような気がする。観戦する者がそうである以上、プレーする選手諸兄も同じであると思うが、いかがだろうか。

優勝したのは智弁学園だった。私が見た試合では1点も取られなかったので、投手を含めた守りが安定していたという印象である。まぁ・・・、野球に直接関係のない話になってしまうが、先月モーリスホワイトが他界したので、智弁学園のブラスバンドが5度も(5試合も)アルプススタンドでLet’s grooveを演奏できて、本当にいい供養になったと思う。今日の決勝戦の中継をラジオで聞いていて、試合終盤に智弁学園のブラスバンドがジョックロックを演奏しているときに、某国営放送のアナウンサーが“智弁学園と智弁和歌山の共通のチャンステーマのジョックロックが演奏されています”みたいなことを言っていたが、今やNHKのアナウンサーが中継で発することが許されるほどジョックロックという曲名が日本中に広まっていることは驚きに値する。そういえば、智弁和歌山のブラスバンドがアフリカンシンフォニーを甲子園球場で初めて演奏してから来年で30年。近年、世間で智弁というと和歌山と思われがちだったので、智弁学園の前の監督さん(上村監督)も今回の優勝を喜んでいることだろう(注:上村監督が他界されて小坂さんが監督に就任されたはず)。

智弁学園の優勝は素晴らしいことだったが、高松商の決勝進出も同じくらい素晴らしい出来事だった。高松商の打撃が素晴らしいことはすでに語りつくされているが、脚の速い選手が多くて攻撃型の野球を展開し、打つという以外の面においても素晴らしい攻撃力だったという印象が強く残った。特に驚いたのは、走者が塁に出るとカウントによってスタートを切る回数の多いこと。現場で見る限り、監督さんはそれほど合図(サイン)をしていないように思えてならなかったが、走者のスタートは各選手の判断に任せていることが多いのだとか。グランドにいる選手が状況に応じて各自で考え、スタートを切っていたのだとすれば納得のいく話だと思った。

今回の大会でいちばん印象に残ったプレーは、龍谷大平安v明石商の8回表無死一二塁の場面で1番打者を迎えて、ボールカウントが0ボール2ストライクになったときに龍谷大平安の内野手が見せたサインプレーである。前の投球の際に一塁手と三塁手が同時にダッシュして遊撃手が三塁のベースカバーに走り、打者のバントがファウルに終わる。その次の投球前に遊撃手が三塁方向へベースカバーに走るのと同時に、二塁手がベースカバーに入って投手が二塁へけん制球を投げる。このプレーをスタンドで見ていて、龍谷大平安の内野守備陣(捕手)はまだ落ち着いていると思ったし、このピンチの場面でもよく周りが見えていると思わされた(注:二塁走者がちゃんと帰塁したためサインプレーは成功しなかったが)。結果的に龍谷大平安はこの試合でサヨナラ勝ちし、次の試合では同じスコアでサヨナラ負けしてしまったが、どんな野球を目指しているのかがよく分かるプレーだったと思う。それにしても、私が甲子園球場へ足繁く通うようになって20年が経過するが、平安の応援は20年前と今とでほとんど変わっていないと思わされる(いくつか曲が増えたが)。

細かいことはさておき、今大会で一番の驚きは、大会前に予想だにしなかった海星のベスト8。私が見た試合では、各打者がよく振れているという印象だった。準々決勝の試合ではリードを許したものの、中盤には激しく追い上げた。選手の能力や技術がもっと優れたチームはほかにあったのかもしれないが、応援の力も含めて最後まであきらめない姿勢が印象的だった。主戦投手のひじの調子が万全ではなかったことが惜しまれてならないが、また見てみたいと思わされる好チームだった。それにしても、ロッテの歴代のチャンステーマを演奏するチームの多いことには、もはや驚きを通り越して敬服の念すら抱かされる(注:ロッテの応援は12球団随一とひそかに言われる)。

今回は大会の終盤に進むほど接戦が多くなり、見ていておもしろい大会だった。ベスト8に勝ち残ったチームは、どこも実力が拮抗していたと感じた。夏の選手権で予選を勝ち抜いて代表になるのは簡単ではないと分かっているが、夏もおもしろい大会になることを期待したいと思う。そして、ネット裏の席をドリームシートと称して子供たちを招待するのは素晴らしい取り組みだった。今後も未来ある子供たちを幅広く招待して継続してほしいと思う。

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  • 高田高校選手諸兄のご活躍をお祈りいたします
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